薬剤師は景気の好不調の波を受けにくい人気の業種です。しかし、人生の多くの時間を費やすわけですから、やはり、よりよい処遇・よりよい人間関係・よりよい職場環境を求めたいものです。一度しかない人生です。ユーザーのみなさまが、ぜひ素敵な仕事・職場にめぐり合えることを祈っております。
2012/3/21
新卒薬剤師、「年収600万円」
3年ぶりの新卒薬剤師に、各社が獲得合戦を繰り広げる。薬学部生に高収入を提示して、囲い込みに走る企業も。パートの時給も2倍に跳ね上がり、「賃金バブル」の状態が続く。
薬剤師不足に頭を痛めてきたドラッグストアと調剤薬局が、久々の「人材獲得」に沸き上がっている。
2006年に大学薬学部が4年制から6年制に移行し、2010年と2011年は「新卒薬剤師」がいない空白期間となった。だが今年4月、新卒薬剤師が3年ぶりに誕生する。
その獲得合戦は熾烈を極めた。高齢化が進み、薬剤師の需要は年々増加、需給ギャップは拡大の一途をたどる。それだけに、新卒の獲得は急務で、薬科大学の就職部には「毎日のようにドラッグストアなどの採用担当者が相談に来た」(就職部部長)という。
だが、現実は厳しかった。「100人採用の予定が6割程度しか内定を出せなかった。病院の人手不足も深刻で、そちらに人材が流れている」(大手ドラッグストア幹部)。「3ケタの新卒採用を計画したが、2ケタにとどまりそうだ」(大手調剤薬局広報)。
今年の卒業生は約9000人の見込みだが、店舗拡大を続ける調剤薬局やドラッグストアは、大手チェーン数社だけでも1500人以上の採用計画があった。
各社が採用に苦戦する中で、獲得攻勢をかけて成功した会社もある。ドラッグストア大手のグローウェルホールディングスは、100人の採用計画が「ほぼ計画通りに進んだ」という。同社は新卒に600万円の年俸を提示したことで、業界関係者を驚かせた。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、薬剤師の平均月給は30代後半で35万円程度。それだけに、グローウェルの高給待遇は際立つ。
「正直言って、ドラッグストアを希望先に挙げる学生は少ない」と薬科大学の就職部部長は打ち明ける。学生に人気なのは、病院など医療機関。「研修生扱いで収入がほとんど見込めなくても、『専門性を生かしたい』という学生の応募が殺到する」(人材派遣会社)。こうした学生の意向をうまく受け止め採用に結びつけたのがドラッグストア大手のスギホールディングス。在宅医療に力を入れており、「専門性を前面に出して、計画通り200人に内定を出した」(同社広報)という。一方で、他社との違いを打ち出せない地方チェーンなどが採用難に苦しんでいる。
ただ、「内定通りに学生が就職するのか、4月になってみないと分からない」と話す関係者も多い。というのも、「超売り手市場」で、薬学部生が進路を決めていないまま、企業を値踏みして、とりあえず内定を取得する動きが広がっているからだ。また、6年制に移行してから初の薬剤師国家試験となるため、どれだけの学生が合格するか、見通しが難しい。
こうした採用難の状況から、中途採用市場も過熱する。この2年間も、新卒薬剤師の空白期だったため、薬剤師の中途採用が盛んに行われてきた。
人材派遣大手のインテリジェンスによれば、2010年まで薬剤師のパート求人は、時給が1000円台後半で推移した。だが、2011年になって2000円を突破するようになったという。
地方のドラッグストアでは、時給を4000円につり上げて、就職準備金の支給や引っ越し代の負担、家具付き住居の提供まで提示している企業もある。「ほかの社員に知られないように、募集で明示した金額よりも高い時給を、パート薬剤師にこっそり支払っている企業もある」と関係者は話す。
今後は新しい薬剤師が毎年輩出されるようになるため、人手不足感は徐々に緩和されると見られる。それでも「今後2〜3年は、売り手市場が続くだろう」と見る業界関係者が多い。
薬剤師の「賃金バブル」はしばらく続きそうだ。